新規ビジネスに関して、起業後5年で約60%の会社が倒産しているといったレポートがあります(注:参照するデータによって得られる見解が異なります)。これは近年言われ始めたことではなく、随分と昔から同じような話を何度も耳にしています。

この類の話を耳にする時は、同時に「新規ビジネスが失敗しない良い方法」も必ず教えて下さるのですが、全体として倒産率が下がったという話を聞いたことは一度もありません。つまり、これまで登場してきた数多くの「新規ビジネスが失敗しない良い方法」の効能は疑わしいものと言えます。

パッケージ化された何らかの方法を採用して利益を得たとしても、大抵は、部分的なものや一時的なものであって事業の安定に繋がっていかないと思います。当社は経験上、そもそも経験値の浅い業種業界に対して的確なアドバイスができるほどビジネスは甘くはないと痛感しており、最終的には経営者の資質に左右される部分が大きいと考えております。

経営者の資質

経営者の資質は、ベンチャー企業の株式公開(IPO)でも審査される項目であり、例えば、ワンマン社長は良しとされません。従業員に業務分掌や職務権限の委譲を行って組織的に活動することが大切であり、その上で労務問題を起こさないように従業員に対する姿勢も大切です。そして先見性や計画性、問題解決能力等も審査全体を通じて問われています。

これから新規ビジネスを始める起業家にとって、株式公開(IPO)は縁遠いと感じるかもしれませんが、事業規模を大きくしていく段階になれば必ず出現する壁です。大きな会社の話は、小さな会社には当てはまらないと思うかもしれませんが、組織を動かす時には会社の大小は関係がありません。小さな会社のワンマン社長に素直に従って、共に成長していこうと決心する従業員は少ないだろうと思えば、よくわかることです。

事業計画書の効能

一方、事業計画書とは、資金調達を成功させたり、ビジネスを成功させるために作成する書類と言えます。書類作成の大変さから敬遠する人が多く、資金調達以外で運用している経営者も少ないのが実情です。起業後は、何よりも先ず、ビジネスモデルを構築して収益基盤を安定させることが重要であるため、膨大な実務に追われて「事業計画書をつくっている暇はない」というのが本音でしょう。

しかし、事業規模を拡大していく次のステージにおいて、先見性や計画性を持って会社を組織的に動かそうとすれば、事業計画書は必須と言って良い書類であり、ワンマン社長から脱却する機会となります。また、起業後の収益基盤を安定させる初期段階であっても、事前に作成した事業計画書は、事業展開における一つの軸となって経営判断をしやすくなるメリットがあり、経営者自身が、経営者として持つべき視野を意識できるようにもなります。

人災を起こす事業計画書とは

以上のことから「事業計画書をつくってビジネスを成功させましょう!」と話を繋げたいところですが、実際には、頑張って事業計画書を作成したにも関わらず、トラブルが生じて倒産に追い込まれるケースは多いのです。

「なぜ、事業計画書を作成したのに倒産するのか?」

このブログのテーマは、この問いに対する具体的な事例を提示することにあります。要は、作成した事業計画書のどこに問題があったのか?について、当社が知り得る範囲でまとめたものとなります。

なお、「人災」は広辞苑によれば「人間の怠慢・過失・不注意などが原因となって起こる災害」です。つまり、事業計画書を作成する時の怠慢・過失・不注意などが原因となって起こるトラブルのことを「人災」と表現しているのであり、自分でコントロールできる災いの源であれば、予め自分で取り除いておきましょう、というのがテーマです。

政治、行政、法律、社会、競合など外部環境の変化によって生じる災いは、通常、自分ではコントロールし難いものですが、事業計画書を駆使すれば、自社の内部環境を整えて人災を抑制できる可能性が大いにあります。これから起業される方々に対して、このような対処をお薦めすれば、経営者の方々が成長される一助になれるのではないか?と考えた次第です。

このブログで紹介する事例を参考にして、皆さまの事業計画書に対する理解を深める機会になれば幸いです。

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